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科学隣接領域研究会

コアメンバーインタビュー

これから世界に羽ばたきたいすべての人へ

プロジェクトリーダー 金子 務氏 (大阪府立大学 名誉教授)

日本科学協会の新たなブロジェクト科学隣接領域研究会。哲学・倫理・宗教など隣接領域と科学のあり方を問い直すこのプロジェクトについて、科学技術史、科学哲学を専門とするリーダーの金子務先生にお聞きした。

金子 務
(大阪府立大学 名誉教授 国際日本文化研究センター共同研究員)
【専門分野】科学技術史、科学哲学
  • 日本科学協会元役員(評議員、理事)
  • 『アインシュタイン・ショック』(1981年、河出書房新社、のち岩波現代文庫)で第3回サントリー学芸賞
  • 『江戸人物科学史』(2005年、中公新書)他
  • 編著『宮澤賢治イーハトヴ学事典』(2010年、弘文堂)、『エネルギーを考える』(2013年、作品社)等

幅広い視野を有し相対的な価値観を持つことが、これからの科学者に求められる資質

何を目的に、この研究会を設立されたのでしょうか

1995年に発生したオウム真理教による「地下鉄サリン事件」、また近年においては理研におけるSTAP細胞に関する事件などを経て、今は科学研究者に対して、その社会性や倫理性が高く求められる時代になっています。
また、グローバル化する現代において、科学研究者のみならず、海外でも活躍しようとするビジネスマン等においては、国際的な知見、教養は当然求められ、日本独自の文化観だけでなく、世界におけるさまざまな文化観への知見および理解が当然求められるわけです。日本科学協会を通じて、若手研究者の助成を行ってきた我々としては、こういった問題に関しても取り組む必要性があると考え、この研究会を発足しました。
助成対象である若手研究者は、いずれはそれぞれの研究業績を基に、日本における指導的な科学研究層を担っていく世代になります。彼らが指導的立場を担う世代になったとき、それまで研究してきた専門領域に関しては“蛸壺的”に掘り下げて精通しているが、異なる領域に関してはあまり理解していないということになると、これは社会人として問題ではないかと考えるわけです。ましてや、現代はグローバル化されており、国際人としての資質も問われている。
科学には国境はなく、世界的な問題に対する基本的理解、認識、関心を持つことが要求されるのは必然です。
そういった考えから、本研究会では、まずは「宗教」「倫理」「芸術」という科学に対する3つの隣接領域を取り上げ、これらへの理解を深めていただくことを目的とした活動を行おうと考えています。

科学者のモラルについて、現状はどのような課題があるのでしょうか

これは今の若い研究者に問題があるということではなく、普遍的な問題であると考えています。
科学者に限らず、人間は何かに邁進するにつれて、それ以外のことへの関心が薄れ、社会性が欠落する可能性がありますが、科学界においてはそれが顕著に現れることがあります。これは「パブリッシュ・オア・ペリッシュ」(publish or perish) という言葉に表されるような、競争原理を優先するがゆえに疎かになる社会的な問題です。
ある意味、科学研究者は自身の研究課題に“蛸壺的”に取り組むあまり、研究結果がもたらす社会的な影響などへの関心が薄れ、それにより社会的な判断力を失う可能性があります。それが、先に述べたような社会的な事件へとつながるのです。研究対象だけでなく、隣接する領域への関心を持ち、それらへの知見を深めておけば、そういった事件に巻き込まれることはないだろうと思います。
また、現在は「第4次産業革命」といわれ、社会的にも新たな課題が表出しつつあります。ワットの蒸気機関に始まる第1次産業革命、電気技術の登場による第2次産業革命、コンピュータの発明による第3次産業革命に続き、現在は世界的ネットワークの登場による第4次産業革命の時代であり、一般社会的な問題としてシンギュラリティ(AI・ロボット技術成熟などの特異点)など、すでに空想ではなく現実的な問題として語られているわけです。こういった時代において、科学研究者はより社会性が求められることは当然です。
しかし、現状においては科学界においてさまざま事件が起こっている。科学が圧倒的な力を持つ今だからこそ、科学研究者の社会性や倫理性を再認識する必要があるのです。

科学研究者に限らず、多くの人に啓発したい

研究会として、今後どのような活動を考えているのでしょうか

競争原理や効率性重視といった傾向は、ある意味危険性を孕んでいると思います。近年、国家的に進められている大学教育政策は、専門領域以外の教育が簡素化される傾向にあり、これは日本科学界の弱体化にもつながるであろうという危惧を抱いています。
これからの時代を担う若手研究者には、自身の研究課題に“蛸壺的”に取り組むのではなく、人間の社会文化といった領域にもより関心を持ち、社会的な人としての教養を持っていただきたいと考えています。国際的に活動するという視点においても、こういった教養は必要となります。
本研究会では、科学の隣接領域として、まずは「宗教文化」「倫理思想」「芸術文化」の3つを取り上げたセミナーを実施していきます。
セミナーでは、科学界だけでなく、宗教、倫理・哲学、芸術といった分野で先進的研究を行っている諸先生方にご登壇いただきます。領域を超えた先進の研究を一同に会するというセミナーは大変貴重な体験であり、若手研究者はもちろん、これからの科学界を目指す学生や国際的に活躍したいと考えているビジネスマンなどにも是非ご参加いただきたいと思います。
また、研究会およびセミナーを通じて、科学隣接領域に関する書籍を発行すると同時に、若手研究者や学生、さらには一般の方々が理解しやすいようなかたちでハンドブックも作成したいと考えており、ハンドブックは日本科学協会が実施する助成対象者にも配布していきたいと考えています。

日本科学協会主催セミナー

木魂(こだま)する科学とこころ 科学と文化の交差点 宗教文化編
  • 参加費無料
  • 定員150名
    事前登録制

日時:2017年7月2日 13時〜18時半
会場:港区赤坂1-2-2 日本財団ビル2階大会議室

セミナー詳細はこちら

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