平成19年度 人文・社会系総評

日本科学協会の笹川科学研究助成に、今年度も情熱に満ちた独創性あふれる申請が多数寄せられたことは、今後の日本の学問研究の確かな興隆に寄与するものと、意を強くするものです。こうした堅実でしかし新規性のある研究が将来の大きな展開に花開いていくものと期待します。

ですが、全体の申請を通じて、いくつか気になる点が出てきたのも事実です。そこで、申請に際しては、以下のような基本的作業と態度をぜひ心がけて欲しいと思います。

  1. 研究計画を綿密につめること。
  2. 支出計画を堅実につめること。
  3. 研究計画と支出計画を正確に整合させること。

この3段階をしっかり踏んでください。

この基本態度を重視することを再確認しながら、以下に感想と留意点を述べてみたいと思います。

  1. 推薦書を求めているということは、推薦者による申請者の研究の一層の精査やブラッシュ・アップ、全体としての指導がなされているか、という研究室の積極性や支援体制などの姿勢も問われていることになります。「もう少し指導してあげれば、採用されるのに」と感じる申請書に出くわすのは、残念でなりません。テーマの平凡性は、指導教員の責任でもあります。申請者個人の研究の内容と計画を審査することが、あくまでも基本で第1ですが、採用後の予算執行に関する監査は、推薦者や所属研究室に委ねられますので、研究室全体や指導関係のなかでも、若手研究者の支援体制を意識していっていただきたいと思います。
  2. 申請者、とくに外国からの留学生は、推薦者や指導教員との十分なディスカッションを行い、テーマのシャープさや研究の独自性の発揮につなげていって欲しいと思います。逆に推薦者や指導教員は、研究室全体を優先させるのではなく、若手研究者の研究を尊重していってください。一方、留学生の申請者は、日本で研究をしながら出身国の対象を調査研究している場合、単なる「お里帰り」と写らないよう、細心の注意を払って支出計画を作成してください。留学生に限らず申請者が、複数回の外国との往復調査をする場合、その必然性を説く必要もあります。
  3. 支出計画では、機器目当ての申請は論外です。パーソナル・コンピュータのような一般的ツールはもちろんのこと、およそその分野の研究に必要な専門的な高額の機器は、その研究室全体で備えていることが普通です。なければ、若手による個人取得などではなく、当該大学や当該研究室の体制として整備する必要があるでしょう。図書費も、その本が図書館などの共用施設で利用できる位の一般性のある書物が多数、高額に申請されている場合が少なくありません。何の本を購入するのかを指示していない申請も評価は低くなります。利用が一般的に困難な図書資料であり、購入の緊要性をぜひ説いていって欲しいと思います。アルバイトを使うなど謝金の使用についても、それが本当に必要な助力や謝金か、その頻度は妥当か、など十分にチェックされることをお薦めします。若手研究者の「汗をかく」研究態度に期待したいと思います。
  4. 研究計画や研究内容が立派に書かれていても、何に費用がいるかを明確にしないもの、その必要性が判然としないものは、評価が低くなります。その意味で、支出計画を作るときには、調査や研究行為の頻度や場所、所在地、個数、機器の必要性など、研究計画をもう一度見直し、その整合性をしっかりととっていただきたいと思います。
  5. 細かい精緻な研究は、一定の評価を得られますが、その研究が陽が当たらない、知られていない、細分化された局所的な研究とはいえ、それが、当協会が掲げる理念をはじめ、どういう広い社会的意味につながるのか、今日的意義をもつのか、広い普遍的意味につながるのかを説得できなくてはなりません。

以上の点を留意され、ぜひとも学問的意欲にみちた誠実な独創的な研究申請を今後も行っていただきたいと期待します。

人文・社会系選考委員会委員長

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