平成19年度 海洋・船舶科学系総評

日本に海洋・船舶科学系という名のもとで行われている研究助成は、本笹川科学研究助成以外には見られない。例えば、文部科学省の科学研究費補助金申請の際の分科細目名に海洋学はなく、海洋学的研究は分散させられ、不利な立場におかれている。一方で、海洋学的研究がそのような状況にあるのは、日本の大学等に総合的海洋学の研究室がほとんどなく、多くの海洋科学者は質量ともに恵まれない環境下で研究を進めざるを得ないということでもある。

したがって、本研究助成は、単に個々の研究を支援するだけでなく、これが核となり、全国の海洋が関わる科学の研究環境の整備に資することも視野においている。なお、この海洋が関わる科学とは、基礎的理学的な科学ばかりでなく、人文社会科学的なもの、資源や環境に関すること、さらに船舶に関わる工学、航海学、水産学も含まれる。

しかし、海を理解し、活用することを目的とせずに、海からの試料や海という場を利用するだけで別の分野の科学を行う研究はこれには含まれない。

平成19年度の本研究助成に申請された研究の傾向、審査に当たって留意した点などを列挙すると、次のようになる。

  1. 沿岸域での研究の方が外洋域での研究よりずっと多い。
  2. 海の環境問題、資源の問題を目指す研究が目立つ。
  3. 観測や実験など自らがデータを取得して研究を進めるものが多い。
  4. 人文社会科学系の研究内容でも申請可能との認識が徐々に浸透しつつあるようだ。この傾向をさらに強めるために、これまで以上に政策研究や産業論研究など切り口や分析視点に多様性が出てくることを期待したい。
  5. 工学系では、研究室があるにかかわらず申請が少ない大学が目に付いた。
  6. また、工学系では、既存の研究の延長であったり、組織的な研究の一部であったりして、研究助成の趣旨を汲んだ思い切った試みが少ないとの印象を受けた。
  7. 海を解くのではなく、単に海から研究材料を得たような、一般科学研究部門に申請すべき内容のものは厳しく評価した。
  8. 国の重点研究など比較的資金を得られやすいと判断される研究の評価は低くした。
  9. 大学の助手、博士研究員など研究職に就いているものは、他から研究費を得にくい状況であることの説明がほしい。
  10. 研究歴が長い者ほどこれまでの研究業績が重視される。一方、研究歴が短い修士課程の学生などは、研究内容を十分に理解し、その重要性を強くアピールする必要がある。ただし、超高度の研究目的を掲げる必要はない。

海洋・船舶科学系選考委員会委員長

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