平成20年度 人文・社会系総評

日本科学協会の笹川科学研究助成に、今年度も情熱に満ちた独創性あふれる申請が多数寄せられたことは、今後の日本の学問研究の確かな興隆に寄与するものと、意を強くするものです。こうした堅実でしかし新規性のある研究が将来の大きな展開に花開いていくものと期待します。

全体の申請を通じて、いくつか気になる点が出てきたのも事実です。そこで、申請に際しては、以下のような基本的作業と態度をぜひ心がけて欲しいと思います。

  1. 研究計画を綿密につめること。
  2. 支出計画を堅実につめること。
  3. 研究計画と支出計画を正確に整合させること。

締切りぎりぎりに応募される申請は、支出計画がずさんになる傾向があります。この3段階をしっかり踏み、時間的に余裕を持って申請して下さい。

この基本態度を重視することを再確認しながら、以下に感想と留意点を述べます。

  1. 国語力の低下を憂います。平明で伝わるしっかりした日本語を書くということを意識して下さい。
  2. 最終の学位(修士または博士)の取得年を書いていない申請がかなりありました。自分の研究の位置をしっかり伝えることを意識して下さい。
  3. 時代が要求する新規性ある研究テーマを発見するにも、基礎知識の集積や結合といった基礎作業が欠かせません。自分の研究の基礎を地道に見つめ鍛えなおして申請して下さい。
  4. 研究計画では、漠然と研究項目を列挙するだけではなく、フィールドワークを行うのか、アンケート調査をするのか、研究室で実験をするのか、その具体的な研究方法を明示する必要があります。
  5. 支出計画では、機器目当ての申請は論外です。パーソナル・コンピュータのような一般的ツールはもちろんのこと、その分野の研究に必要な高額機器は、研究室全体で備えていることが普通です。若手による個人取得などではなく、当該大学や当該研究室の体制として設備する必要があるでしょう。図書費も、その本が図書館などの共用施設で利用できる位の一般性のある書物が多数、高額に申請されている場合が少なくありません。何の本を購入するのかをまったく指示していない申請も評価は低くなります。その図書資料の購入の緊要性をぜひ説いて欲しいと思います。アルバイトを使うなど謝金の使用についても、それが本当に必要な助力か十分にチェックされることをお薦めします。若手研究者の「汗をかく」研究態度に期待したいと思います。
  6. 研究計画や研究内容が立派に書かれていても、何に費用がいるのかを明確にしないもの、その必要性が判然としないものは、評価が低くなります。その意味で、支出計画を作るときには、調査や研究行為の頻度や場所、所在地、個数、機器の必要性など、研究計画をもう一度見直し、その整合性をしっかりととって下さい。
  7. 推薦書を求めているということは、推薦者による申請者の研究の一層の精査やブラッシュ・アップなど指導がなされているか、という研究室の積極性や教育姿勢も問われていることになります。新規テーマの発見への誘導は、指導教員の責任でもあります。研究室全体の指導関係のなかでも、若手研究者の支援を意識していっていただきたいと思います。

以上の点を留意され、ぜひとも学問的意欲にみちた誠実な独創的な研究申請を今後も行っていただきたいと期待します。

人文・社会系選考委員会委員長

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