平成22年度 人文・社会系総評

日本科学協会の笹川科学研究助成に、今年度も若手研究者による多数の申請が寄せられたことは、今後の日本の学問研究の興隆に寄与するものと、おおいに期待するものです。ただ、全体の申請を通じて、いくつか気になる点が出てきたのも事実です。そこで、以下に平成22年度申請をめぐって、感想と留意点を述べます。

  1. 今年は、まず全体として応募数が少し減りそれだけ応募者にとっては採択のチャンスが増えたのですが、研究の目的、計画、予算のどこかで手を抜いているもの、意味不明の文章を書いているもの、基礎知識の集積や結合といった学問の基礎作業を欠いているもの、などがあったのは残念なことです。自分の研究の基礎を地道に見つめ鍛えなおして申請してください。その意味からも、平明で伝わるしっかりした日本語の文章を書くということを意識して下さい。若手研究者の日本の学界を背負っていくというような、独創性と新規性に満ちた情熱と気概に期待したいと思います。
  2. 研究計画では、今年も、研究目的と重複しているものが数多く見られます。漠然と研究項目を列挙するだけではなく、とくに研究計画の実施方法として、フィールドワークを行うのか、アンケート調査するのか、研究室で実験をするのか、図書館で資料の探索を行うのか、その具体的な研究方法を明示する必要があります。研究項目の他に、調査手段・方法を手順とともに具体的に示すということを意識してください。
  3. 支出計画では、簡単に済ませたものなどやや杜撰な支出計画が見られました。研究計画で重要度を認識させるすばらしい内容が説明できているのに、予算になった途端、あまりにも力を抜いた簡素すぎる項目記入になっているもの、逆に計画内容に相応しない高額すぎる支出が計画されているものが、見られます。図書費も、その本が図書館などの共用施設で利用できる位の一般性のある書物が多数、高額に申請されている場合が少なくありません。何の本を購入するのかをまったく指示していない申請も評価は低くなります。その図書資料の購入の緊要性をぜひ説いて欲しいと思います。アルバイトを使うなど謝金の使用についても、それが本当に必要な助力か十分にチェックされることをお薦めします。若手研究者の自ら「汗をかく」研究態度に期待したいと思います。
  4. 研究計画や研究内容が立派に書かれていても、何に費用がいるのかを明確にしないもの、その必要性が判然としないものは、評価が低くなります。一般的な情報収集の機会としての学会参加の申請など、その最たるものです。学会参加の必要性があるなら、自らの研究内容と詳細に深く関連させてその必要性を説いてください。その意味で、支出計画を作るときには、調査や研究行為の頻度や場所、所在地、個数、機器の使用、そこに行くことの必要性など、研究計画をもう一度見直し、その整合性をしっかりととって下さい。
  5. 今年多くなかった私立大学からの申請、「恵まれない」研究機関からの申請、外国人留学生からの申請も、もっと数多く申請していただきたいと期待します。また、今年、申請数の割には採択の少なかった教育学、人間科学、発達科学などの分野での、指導教授とともに教室あげての自己練磨の努力に期待したいと思います。

以上の点を留意され、ぜひとも学問的意欲にみち誠実で独創的な研究申請を今後も行っていただきたいと期待します。

人文・社会系選考委員会委員長

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