平成22年度 海洋・船舶科学系総評

平成22年度の海洋・船舶科学系応募者数は前年度の約3分の2に減り、競争率は約2倍になってしまいました。これに並行して起こっているのが、大学院、特にその後期課程への進学率の減少です。日本には海洋科学関連の名称を持つ研究室が極めて少ないので、その傾向が増幅されてしまったようです。決して海洋・船舶科学が不要になったからではないことは、数は減りましたが、レベルの高い研究が多数応募していることからわかります。

頭を悩ませたのは、研究経験の浅い者と豊富な者を並べて資質を比較し、より成功の可能性の高い者を選ぶ作業でした。結果的には、博士に向かって意気溢れる者には加点し、助教など他に研究費を得る道のあるポストに就いている者については割り引きました。

海洋・船舶科学への申請研究は、他の学術領域へも申請できます。そこで、海洋・船舶科学へ申請できる研究は、研究成果が海洋・船舶科学の発展に寄与するものとしていますが、紛らわしいのが地球科学関連の申請研究です。堆積岩、海水、海洋生物を扱ったからといってそれだけでは海洋科学にはなりません。

今回の申請研究に現れた特徴としては、まず、地球環境問題に関連づけた研究が多かったことがあげられます。省エネルギー、再生可能エネルギー、環境計測、海洋酸性化の影響、長期変動などが取り上げられていました。

生物関係では、海洋生物の行動に関する研究が多くありました。行動は生態の重要な要素として生物の生残と成長に大きく関わっていますが、定量的表現が難しく、取り上げる研究例が少なかったです。ロガーや映像を駆使してこれに迫ろうとする研究は頼もしく思います。また、遺伝子関係の研究が目に付きました。ただ、遺伝子を扱えば評価される時代は終わり、それを手法として何を明らかにするのかが問われるようになりました。

物理関係や船舶関係の研究が少なく淋しく思います。衛星を利用した研究も申請件数が少ないとは言い難いですが、機関数(研究室数)が限られており、研究に深みを持たせるためには、もう少し多くのグループが競争し合うことが必要でしょう。

化学系は、複雑な自然を解明するために多数のデータを得ることに意を注ぐ研究が多く、新しい分析手法を応用しようとする例がいくつか現れました。これらをうまく使いこなせば、新しい局面が開かれるでしょう。ただ、海洋観測には多数の力を結集する必要がありますが、大きな研究室が消える傾向が見られるのは残念です。

海洋・船舶科学関係は、理工系だけでなく、人文・社会科学関係も申請可能ですが、申請数は少なかったです。これは日本全体にそのような研究が少ないからかもしれません。本研究助成が契機となって、人文・社会科学的視点にもとづいた研究がさらに広がり、深まっていけば、たいへん意義あることになると思います。

海洋・船舶科学系選考委員会委員長

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