平成23年度 人文・社会系総評

日本科学協会の笹川科学研究助成に、今年度も若手研究者による多数の申請が寄せられたことは、今後の日本の学問研究の興隆に寄与するものと、おおいに期待するものです。ただ、全体の申請を通じて、いくつか気になる点が出てきたのも事実です。そこで、以下に平成23年度申請をめぐって、感想と留意点を述べます。

  1. 研究の目的や問題意識で、本会が掲げている「陽の当たらない」という趣旨の特色を強く意識して、申請者各自の研究目的の位置づけをされるといいでしょう。他助成にはない本会の助成趣旨をしっかり認識して、これと申請者の研究目的や問題意識とすりあわせて申請することが重要です。全体として、新規性や萌芽性に充ちた「キラリと光る問題意識」をもっと要求したいと思います。若手研究者の独創性に満ちた情熱と日本の学界を背負っていく気概に期待します。ただ、研究の全体像は大きいものであっても、助成は1年なので、1年で達成できる研究成果を見込んで、地道な研究計画をコンパクトに提示することが求められます。
  2. 研究計画では、研究内容の記述に少し踏み込んだ説明が必要です。つまり、漠然と研究項目を列挙するだけではなく、その実施方法として、フィールドワークを行うのか、アンケート調査をするのか、現地で調査をするのか、研究室で実験をするのか、図書館で資料を使った文献研究を行うのか、その具体的な研究方法を明示する必要があります。研究内容では、研究項目の他に、調査手段・方法を手順とともに具体的に示すということを意識してください。
  3. 支出計画では、図書費を漠然と計上している申請が少なくありません。その本が図書館などの共用施設で閲覧できる位の一般性のある書物が多数、高額に申請されている場合も少なくありません。これらは評価が低くなります。そこでしか入手できない地方出版物や特殊な出版物など、その図書資料の購入の必要性をぜひ説いて欲しいと思います。アルバイトを使うなど謝金の使用についても、それが本当に必要な助力か十分にチェックされることをお薦めします。基本的に、若手研究者が自ら「汗をかく」研究態度に期待しています。その意味で、今年、考古学、美術史、人類学などフィールドワークを行う分野に、緻密な計画を立てている申請が目立ちました。
  4. 研究計画や研究内容が立派に書かれていても、何に費用がいるのかを明確にしないもの、その必要性が判然としないものは、評価が低くなります。パソコンなど機器の購入は、基本的に研究室や大学が手当てすべきものと考えています。学会参加なども、一般的な情報収集の活動であり、研究調査の支出項目としては優先度が低いものと考えていいでしょう。このような点から、支出計画を作るときには、調査や研究行為の頻度や場所、所在地、個数、機器の使用、そこに行くことの必要性など、研究計画をもう一度見直し、そこに合理性や整合性があるかをしっかり確認して、申請して下さい。
  5. 私立大学や女子大学からの申請、「恵まれない」研究機関からの申請、女性、外国人留学生からの申請も、もっと数多く申請していただきたいと期待します。今年度、政治学、心理学、教育学の分野からは、申請数の割には採択数が伸びませんでした。指導教授とともに教室あげての自己練磨の努力に期待したいと思います。

以上の点を留意され、ぜひとも学問的意欲にみち誠実で独創的な研究申請を今後も行っていただきたいと期待します。

人文・社会系選考委員会委員長

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