平成23年度 数物・工学系総評

  1. 全体の印象と問題点:
    1. 本年度の数物・工学系は前年にもまして笹川科学研究助成にふさわしい応募が目立ち、諸研究のレヴェルが上がっている印象を持ちました。研究方法も、数物・工学系の枠を超えた人文系も取り込んだものも見られ、多様化していると思います。同時にそつのない無難なテーマにまとめたものも見られました。
      工学系では要素技術に関するものが多いのも例年の特徴ですが、いま、社会的ニーズとして、環境ナノや電力のスマートグリッドなど、既存技術の組み合わせで問題解決に向かうという、いわゆるソリューション的ニーズが高まっていますから、今後、このような方面への挑戦も期待されます。理論分野ではニュートリノ、暗黒物質関連が目立ち、時代の流行を追っている感じですが、高分子物性などの分野で独創的なものもいくつか見られます。クセノンの表面拡散、溶融鉄表面特性などは、いずれも応用につながることが期待される基礎研究です。
    2. 申請の中には、目標や期待される成果ばかりが強調され、方法論が明確でないものも散見されました。成果が保証されなくとも、萌芽的な研究は重視しますが、研究方法は明確にしてください。新しい現象等の原因や原理が明確でなくとも、原理、原因を明らかにする方法論はしっかり記述してください。
      同一機関、同一研究室からの多数の応募も減ってきましたのも、申請者個人の力量を判断するという趣旨が、徹底してきたためでしょう。申請者がグループないしプロジェクト研究で大きなテーマの一部を担う場合、全体の研究の概要、申請者の研究の位置づけ、研究内容、成果の効果などを明確に記載してください。研究指導者の適切なアドバイスと本人の意欲も、評価の上で参考になります。これも例年見られることですが、研究指導者と申請者本人との仕事の区別がつかないものも、見受けられますのでご注意願います。
      自分の研究のキーワードとなる用語については、特殊であればあるほど十分簡潔に説明してください。申請書中の専門用語でいきなりアルファベットの略号でしか書かないケースが見られますが、略号の元の英語表記を、初出の箇所にきちんと書いてください。
  2. 研究経費について:
    1. 単なる図書・装置購入のたぐいは減る傾向にありますが、アルバイト謝金・検査依頼や講師謝礼・論文投稿費・英文校閲費などに研究費の大半をあてるなどというものもありました。申請額の上限は100万円ですが、研究上それらが真に必要なものか十分検討してほしい問題であります。高度なシミュレーション解析や複雑な実験が増え、それだけに高額な備品項目を申請する場合も見られますが、それが研究計画とどう関連するのか、明記することが必要です。
    2. 海外発表、打ち合わせ目的の海外渡航費などの申請も増えていますが、研究遂行との関連が希薄なものが見られます。審査委員会としては、助成金額の総額に制約があり1年単位でもあることから、研究そのものの助成を主とし、内外旅費等はあくまでも従とする立場です。
      なお本会には、成果が得られた本助成金研究者に対して、後年度に、海外発表旅費を助成する制度もあることを念頭に置いてください。
  3. 数物・工学系選考委員会委員長

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