平成24年度 総評

本笹川科学研究助成は昭和63年に開始しましたから、今回の募集で25回目になります。当初から、科学研究の将来を担う人材の育成とその研究を奨励することを目指し、特に、研究分野や身分的(学生や任期付ポストなど)な問題によって他からの研究助成が皆無あるいは困難な研究の中から、萌芽性・新規性・独創性のある研究を全国的に掘り起こして助成することを一貫して心がけてきました。こうした理想にできる限り近づけるために、"笹川科学研究助成事業委員会"が中心となって、募集分野、対象者、選考方法など、工夫を重ねて現在にいたっています。なお、上記事業委員会は、以下に述べる選考委員会委員長と複数名の学識経験者から構成されていて、任期2年で運営しています。

募集は、"学術研究部門"(申請金額100万円以内)と"実践研究部門"(申請金額50万円以内)の二つに分け、学術研究部門はさらに人文・社会科学および医学以外の自然科学を対象とする"一般科学研究"と"海洋・船舶科学研究"に分けて応募を受け付けています。中でも"実践研究"と"海洋・船舶科学研究"には、上記の本事業の主旨から本会として特に力を入れています。また、一般科学研究は対象範囲が広いため、"人文・社会系"、"数物・工学系"、"化学系"、"生物系"、"複合系"の5つに分け、申請時に申請者に系を選んでいただいています。

申請計画書の審査・選考は、人文・社会系、数物・工学系、化学系、生物系、複合系、海洋・船舶科学系、実践系の7つの選考委員会を設け、それぞれの委員会で事業委員会の選考方針に則って選考作業が行なわれます。選考委員会は専門分野の異なる4~8名の委員で構成(委員総数41人)されています。実際の選考作業では、選考委員がすべての申請書に目を通して評価するケースもありますが、大部分の分野は専門が異なると正確な評価が難しいために専門分野の近い委員が評価を行なっています。

今年度の応募総数は1,195件、採択数は325件で、採択率は27.2%でかなりの激戦ですが、こうした厳しい採択率はこのところ変わっていません。本会では上記の主旨に則って、女性と外国人研究者に配慮しており、ちなみに今年度の女性と外国人研究者の採択率は、それぞれ31.1%と38.5%でした。

学生、契約研究者など現行制度では研究助成の受けがたい身分の人たちの掘り起こしはかなり浸透してきましたが、採択課題を見ると萌芽性・新規性・独創性のある研究が未だ十分に発掘できていない感があります。ただ、昨今、指摘されるようになった「日本全体としての活力低下」があるとすれば、萌芽性・新規性・独創性のある研究自体の減少が懸念されます。

また、昨年は東日本大震災と福島第一原子力発電所事故といった未曾有の災害があり、被災地を中心として研究環境も大小様々な被害を受けたことが推察されました。本研究助成でも、事業委員会で前向きな対応を考えましたが、具体的な被害の実態が十分には把握できなかったために、対応を各選考委員会に任せました。実際に応募された研究計画の中で、震災被害を受けられた方の申請数は限られていましたが、内容を見ると、集めたサンプルや、中にはデータの一部を津波で失ったり、地震で分析機器が破損してしまったケースなど、研究遂行にとって極めて深刻な様々な被害を受けている実態が明らかになりました。にもかかわらず、平常時の何倍も自分自身を奮い立たせて研究遂行に向かう決意がひしひしと伝わり、むしろ審査委員が元気をもらいました。加えて、これらの研究の多くに共通していたことは、萌芽性・新規性・独創性が深まっていたことです。

同時に、災害によって注目の集まった新しい研究課題も複数目につきました。内容を深化させて新しい分野を開拓して行くことが期待されます。また、一方で災害に便乗した浅薄な研究計画もありました。

研究助成を受けられる方には、9月に研究中間報告、3月に研究完了報告を提出していただき、それらをもとにして各選考委員会で研究評価を行ないます。平成19年度から、優秀な成果を上げた研究に対して研究奨励賞が授与されることになりました。平成23年度は、7系(ただし生物系は採択数が多いので2倍)から16名が選ばれ、平成24年4月19日(木)の平成24年度研究奨励の会の前に発表会が行なわれ、奨励の会で賞状と副賞が授与されます。

本笹川科学研究助成の過去25年間の申請総数は33,638件、採択数は7,364件ですから、採択率は21.9%になり、これまでの助成金総額は4、269、700千円に上ります。日本科学協会では、採択された研究者の更なる支援を目指していて、現在行なわれているものでは、過去の助成者を対象として海外の国際学会などでの研究発表の際の旅費・参加費の支援(海外発表促進助成)、ならびに海外から日本の研究機関に来て研究を進めるための旅費・滞在費の支援(外国人研究者訪日研究助成)を進めています。

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