平成24年度 生物系総評

生物系の場合、共通して生命現象を対象としていますが、アプローチが多岐にわたり、しかもそれぞれが高度に専門化してきており、さらに申請件数が極めて多数のために、採択研究が特定の分野に偏ることがないように、分野を分けて審査を行なっています。

  1. 生理・発生・分子・生化・遺伝などの分野

    例年のことですが、優れた申請が多数寄せられることは、審査に当たるものとしてうれしいことです。本年は次世代シークエンシング、アレイ解析などの先端的な方法を用いた研究も多く、また応用面を意識した申請も多数見られました。また、生物学の広がりを反映して、病原微生物、単細胞から脊椎動物まで、研究対象も多岐にわたり、いわゆるモデル生物だけではないユニークな生物のユニークな特性に着目した研究があり、なかなか他からは助成を受け難いが、将来的な夢のある研究として評価を受けました。
    研究計画も、きちんとした書式に必要不可欠な情報を記載したものが多く、この点では長い歴史をもつ本助成に対する申請者の意識が相当に高まっていることを感じました。しかし一方で、研究内容が羅列的であったり、なぜそのような研究項目が必要なのかという点が曖昧である申請も見られました。申請者にとっては自明のことでも、それを審査するものにきちんと伝えることが重要です。
    いわゆる大きな研究室でおそらくは責任者が各種の補助金、助成金を獲得していると思われる場合に、申請者、とくに修士課程などの若い申請者が独自性を発揮するのはなかなか難しいことです。その中でも、自分のオリジナリティを発揮しようとしている申請に対しては高い評価が与えられました。
    これらのことを念頭に置いて、今後とも優れた申請が多く寄せられることを期待します。特に、新しい実験生物の開発につながる研究、古典的課題にまったく新しい視点からアプローチする研究、生物現象を数理解析することを目指した研究など、広い分野からの申請を待っています。
    なお本年は、被災地からの申請に対しては、採択するかどうかは別として、特別な配慮を払った事例が数件あったことを付記します。

  2. 分類・生態・農・水産学などの分野

    一部の研究分野では力のこもった研究申請書が数多く寄せられましたが、予算の制限によって競争が激化し、優れた研究申請書が採択できなかったことは大変残念です。また、今回は博士(後期)課程の学生の応募が少なく、「学部4年生・修士課程・博士(前期)課程」と「博士研究員」に二極化してきている傾向が伺えます。以下は、申請書を審査していて気づいた点です。

    1. 一部の研究分野や大学院低学年生の申請では、研究の大きな目標を述べた後に、直ちに詳細な実験計画が述べられていて、実際の研究によって大きな目標のどの部分がどの程度明らかになると考えているのか皆目見当がつかない申請書がいくつか目立ちました。
    2. 研究目的の中に、特定の専門分野の人にしか理解できないようなものがあり、その場合は評価者が研究目的の意義の理解が困難なので、研究目的には幅広い分野の人が理解できるような配慮が必要です。
    3. データロガーを装着して、単に生態情報を得る研究が未だに見られますが、現在では新規性がありませんので、より突っ込んだ研究目的の設定が必要です。同じく、分子系統学に関する研究は、若い研究者では研究の独自性が出しにくく、さらに研究費の大半が消耗品費に充当されているので熟考する必要があります。一方、伝統的な形態分類に分子系統解析を取り入れて生物多様性をより総合的視点で解析しようとする研究は評価しました。既成概念にとらわれない、若者らしい研究は、多少荒削りであっても、評価するようにしています。
    4. 研究室の複数の研究者との共同研究のケースで、計画書では申請者がすべての研究を行なうように読み取れましたが、実際には分担して研究を進めることが想定され、その場合の申請者の役割分担がはっきりしていないものがありました。フィールド研究の中には、単年度内に単独では到底終了しそうもない内容や、多くの課題を取り上げたために予備的研究になってしまうと考えられるものもみられ、注意が必要です。
    5. 推薦者が複数候補者を推薦する際には、それぞれの候補者の特徴が分かるような記述をお願いいたします。

生物系選考委員会委員長

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