平成24年度 海洋・船舶科学系総評

本海洋・船舶科学研究助成は、募集要項に、「海洋学および海洋関連科学」ならびに「船舶および船舶関連科学」の研究で、その成果が海洋・船舶関係に直結する研究(人文・社会科学を含む)を対象とします、とあります。従って、誰が見てもその成果が海洋・船舶関係に直結する研究の場合はよいですが、得られる成果がどの点で海洋・船舶関係に直結しているかをまず説明していただきたいと思います。得られる成果が、海洋や船舶関係のどのような論文や事業に使われるかが想定できればよいと思います。

平成24年度の海洋・船舶科学系への申請件数は135件で、このところ毎年少しずつですが増えています。それは結構なことのように見えますが、多少心配なのは、助成申請者に大学院に入ったばかりの者やこれから大学院に入る予定の者、大学の助教クラスの研究者が増えているように見えることです。その理由は、本研究助成が前期2年(修士課程)での経験をもとに後期3年(博士課程)での研究を開始する時に与えられれば、大きな飛躍につながり、本研究助成が効果的なものとなる可能性が大きいからです。つまり、この年に博士課程の1年目(前後を含む)になる者は、修士課程で得られた成果を書き、本年度以降、その研究をどのように発展させていくかを書けばよいと思います。

修士課程に入ったばかりの者など、自分で得た成果が何もない者は、作業仮説を立て、それが如何に重要かを説明し、どのようにしてそれを証明するかを説明し、研究計画を述べるようにして下さい。つまり、研究成果をまだ得ていないのに、すでに得たかのような立場で書く(研究計画を立てる)必要があると考えます。

すでに博士の学位を得た者からもかなり多い研究助成の申請がありました。学位を得ているのですから、研究論文の発表数などを大学院生と比べれば、遙かに充実している者が多いのは当然です。しかし、本研究助成は過去の成果に対するものではなく、今後生み出されるであろう成果に対するものです。従って、研究生活の長い者には、それに見合った成果が要求されます。また、複数回の採択は、年齢制限の上限を超えていなくても、なぜ再度の助成が必要なのかについて述べる必要がありますし、その助成がさらに大きな、重要な研究につながっているかを記述する必要があります。

申請された研究を分野別に見ると、それは多分に海洋や船舶の若手研究者が属す分野を反映したものであろうと思われますが、多少心配になることもあります。それは、いわゆる海洋学、物理海洋学の申請割合が小さいことです。また化学海洋学においても、申請件数は物理系よりは多いとは言え、本年の特徴に無機物を扱う者が減り、有機物を扱う者が増えていることがあります。結局、生物海洋学がますます増え、全体の半分を占めています。生物系の研究の中には、試料を海から得たというだけで一般科学研究の生物系に出した方がよいのではないかと思われる研究もありましたが、一般科学研究の複合系に出した方がよいと考えられる地球科学の研究と同様、門前払いはせずに、得られる成果がどの点で海洋・船舶関係に直結しているかどうかを考えて採否を決めました。

昨年度も問題にしましたが、船舶科学の研究および人文・社会科学関係の研究の申請件数が少ない点は、人文・社会科学関係の研究申請は倍増したものの、楽観できるほど増えてはいません。

今年度も地球環境問題に関連づけた研究が多くありました。まだ満足すべき状態ではありませんが、省エネルギーを含むエネルギー関連の基礎研究も現れました。大きな研究室の場合、切磋琢磨するのはたいへんよいことですが、その研究室から申請された研究を並べて見ると、先輩の単なるまねだったり、指導教員が仕向けたように見える研究だったりする場合があるように見えます。

海洋・船舶科学系選考委員会委員長

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