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採択情報・選考総評

平成29年度数物・工学系総評

数物・工学系選考委員会委員長

1.全体の印象

  1. 数物・工学系分野の申請では、宇宙論関係、惑星科学関係、多元素材料や有機体半導体などの物性関係、素粒子論関係などが目立っています。これらの分野には優れた指導者も多く、優秀な若手も集まってくる結果、意欲に燃え、最先端に伍する勢いを感じる申請も多いようです。例えば素粒子論では、ヒッグス粒子の発見、益川―小林の標準理論に続いて梶田の中性微子質量に関するノーベル賞受賞、米国における重力波の発見といった新時代を画するイベントを契機に、その申請のほとんどが標準理論を越えようとする問題を扱っていて、それが可能なら世界初となるアイデアが盛り込まれています。惑星探査の問題で、惑星表面移動の手段としてソリを利用するテーマなど、ビッグプロジェクトの中でもニッチな着眼もありました。留学生や女性も頑張っています。単一細胞を測定可能にするイメージセンサーの開発などですが、独創性、萌芽性が見られます。身の回りの問題から視覚障害者のためのプログラミング環境の開発など、新しさも目につきます。
    流行に流されず、基礎から考える姿勢を大事にする研究ほど、新しさや独自の成果が期待できる点を、これからの若手研究者・申請者はぜひ参考にしてください。
    本助成は「さまざまな理由で他からの助成の受けがたい研究」を優先しています。若いうちからチャレンジングなテーマに挑戦することが大切です。大プロジェクトの一部を切り取ったような研究は本助成の趣旨に反します。どこまで大学院生のアイデアなのか見分けるのが難しいものも困ります。
  2. 研究テーマの違いでやむを得ないこともありますが、同一研究室からの複数応募がまだ目につきます。プロジェクト研究そのものを申請するものも見られますが、本助成は、プロジェクト研究ではなく、研究者個人に出すものです。申請者がグループないしプロジェクト研究で大きなテーマの一部を担う場合、全体の研究の概要、申請者の研究の位置づけ、研究内容、貢献度などを明確に記載してください。研究指導者の適切なアドバイスと本人の意欲も、申請者個人の力量を判断する上で参考になります。
    研究の実施内容では、研究目的が達成できることを筋道立てて示すことが肝要で、そのための方法論にも十分に配慮して欲しいものです。
  3. 指導の先生方へのお願いですが、推薦書は本人の力量がわかる書き方でお願いします。審査過程の重要な判断参考になるものです。テーマの宣伝に終始して候補者への言及がないものもありました。なかには本人に書かせたものとしか思えないものも見受けられますが、これなどは論外です。

2.研究経費について

  1. 研究予算の記述が雑なものが目につきます。研究計画と予算との整合性も採否の重要な判断材料です。単なる図書・コンピュータ・装置購入のたぐいは減る傾向にありますが、アルバイト謝金・検査依頼や講師謝礼・論文投稿費・英文校閲費などに研究費の大半を充てるなどというものもありました。申請額の上限は100万円ですが、研究上それらが真に必要なものか十分検討してほしい問題であります。
  2. 海外発表、打ち合わせ目的の海外渡航費などの申請も増えていますが、研究遂行との関連が希薄なものが見られます。選考委員会としては、助成金額の総額に制約があり1年単位でもあることから、研究そのものの助成を主とし、内外旅費等はあくまでも従とする立場です。成果発表のため国内外の旅費に研究費の半分以上を充てるというのは、本助成の意図とは異なります。
    なお本会には、成果が得られた本助成金研究者に対して、後年度に、海外発表旅費を助成する制度もあることを念頭に置いてください。
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