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採択情報・選考総評

平成29年度生物系総評

生物系選考委員会委員長

 生物系の場合、共通して生命現象を対象としていますが、アプローチが多岐にわたり、しかもそれぞれが高度に専門化してきており、さらに申請件数が極めて多数のために、採択研究が特定の分野に偏ることがないように、分野を分けて審査を行なっています。

●生理・発生・分子・生化・遺伝などの分野

 本年も多数の優れた、熱意のこもった申請を頂き、申請者ならびに推薦者に感謝申し上げます。多くの申請の中から採択課題を選出する作業は大変ですが、一方でこの助成によって若手の研究がいささかなりとも推進されるのであれば、それは審査に当たるものとしてはきわめてうれしいことです。

 生物系、とくに分子生物学などを主とする分野では、近年先端的な遺伝子操作、遺伝子導入などを駆使した研究課題が多く見られるのは、時代の趨勢といえるでしょう。2,3年前までは新規の技術であったCRISPR/cas9を用いた遺伝子導入による遺伝子の機能解析などの研究も、ごく当たり前に行われるようになっています。このような先端的研究の中にも当然優れたものが多くありますが、笹川科学研究助成の趣旨からして、独創性、意外性を持ったテーマがもう少し増えて欲しい、という希望もあります。一方で、生物の多様性に注目して、従来のいわゆる実験生物ではない生物に関する研究も増え、新たな研究分野が開拓されつつあることにも注目したいと思います。今回も、トラザメ、ツマムラサキマダラ、キボシカミキリなど、おそらく本助成への申請でもめったに見られない動物名が登場し、ユニークな研究テーマとなっていました。

 医学分野や農学(とくに獣医学)分野からの申請も多く見受けられました。純然たる医学研究は本助成の対象とはなりませんが、医学への応用、あるいは獣医学への応用を志向した基礎研究は勿論対象となります。それらの研究の中には優れたものも多く、高い評価を得ました。研究成果が与える影響を記述する欄において、無理に応用的な側面を強調することなく、基礎的な面に重点を置いていることを、むしろ研究の特色としてもいいでしょう。

 申請に当たって、是非申請者にお願いしたいのは、(1)研究内容を適切に表す課題名を用いること、(2)専門分野とキーワードの重要性を認識して、具体的で情報量の多い用語を用いること、(3)一般性を持たない専門用語は丁寧に説明すること、(4)研究計画のうち「実施内容」は、できるだけ具体的に、また1年間の研究期間に実施可能な計画を述べること、(5)「期待される成果」については、研究から直接導かれる成果と、それが当該分野の研究発展にどのように寄与するかという、少しlong rangeな影響を記述すること、(6)支出計画も研究計画ときちんと関連付けて記載すること、などです。また、申請の本文と、指導教員などの推薦文に、コピーではないかと思われる部分が見受けられることがあります。本研究助成の趣旨が、研究室のプロジェクト研究に対する助成にあるのではなく、申請者本人のアイデアに基づく個人研究への助成であることを考えると、推薦書と申請書の間でいわゆる「コピペ」が見られる申請は、本会への申請書として不適格であることは間違いありません。

 この総評も参考にして、今後も多くの優れた申請が寄せられることを期待してやみません。

●分類・生態・農・水産学などの分野

 マクロ生物分野では、例年と同じく多くの若手研究者が多様な学術研究テーマに取り組んでいて大変好ましい傾向です。しかし、残念ながら予算の都合で一部しか採択できませんでした。当該分野を担当した審査委員の多くが感じた全体に共通したのは以下の五点です。

 第一は、例年と同様に、全体的に学術的に興味のある研究テーマが多く、しかも研究分野は分類・形態・生態・行動・分子解析など、多岐にわたっているという印象を強く受けました。また、本助成制度の支援対象の若手研究者が活発に研究している様子が強く伝わって来て頼もしい限りです。
 
第二は、これまでは分子生物学やその他の最新機器の単なる利用といった研究が多かったのですが、今年度はそれらを上手に利用して見えなかった現象を明らかにしていく方向へと進んだ研究が多くみられるようになりました。

 第三は、例年みられることですが、今年度も単年ではできそうにない申請が多くありました。これらの研究では、目標を絞り込んで研究計画を具体的に記述して説得力を高めて申請する必要があります。中でも壮大なテーマを上げる場合には、申請年度に解明しようとする「副題」を添えるのも良いでしょう。修士課程(2年間)や博士課程(3年間)の研究テーマを上げた際には、全体計画を示して当該年度で明らかにする内容を示すのも一案です。

 第四は、研究目的・実施内容・研究の特色などが、学会の講演要旨のように、その分野でしか用いられていない特殊な述語や省略記号で書かれている申請書があり、これでは様々な内容の申請書を限られた専門分野の審査委員で審査しなければならない本研究助成では正しい評価ができにくいので、注意が必要です。

 第五は、研究経費の内訳が“分析試薬一式”などと漠然としていたり、理由の説明もなく研究室の汎用備品の購入に充てられているものが複数見られました。審査では研究計画と研究経費の整合性も検討します。特に、研究実施計画が概念的になると研究経費の内訳も具体性を欠きますから注意が必要です。

 以下は、各審査委員が感じた個別の印象です。これらは必ずしも全体には当てはまりませんが、今後、研究計画をまとめる際の参考にしてください。

  1. 助成金を得ることが困難な分類学や行動学のような分野で、優れた研究内容を書類作成の工夫でさらに説得力を高めて魅力的なものにした申請書が複数あり感銘を受けました。
  2. 共進化、種分化、生物間相互作用、行動などで面白い観点のテーマが出てきています。
  3. 同一研究室の申請者では、同じ研究対象(種や現象)を単に異なった側面から研究しようとする傾向が見られる場合があり、これでは申請者の独創性の貧弱さが目立ちますので注意が必要です。
  4. 推薦者の方には、複数の学生を推薦する際に、すべての学生に内容の特定なく「最も優秀」と書かれると推薦書の信頼性が低下しますのでご注意ください。
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