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採択情報・選考総評

平成29年度複合系総評

複合系選考委員会委員長

複合系は、研究分野の範囲が広く、なるべく、研究分野が偏らないように配慮して採択しました。すなわち、代表的な研究分野によってテーマを分類し、それぞれの分野の専門に近い委員が分担して審査を行います。採択に当たっては、特定の分野の研究に偏らないように配慮して審査を行います。しかし、採択率が低いために、もっともすぐれた代表的な研究を全分野から1件づつ採択するということは無理です。そのため、どの研究分野を採択するかという問題は、ある程度、審査員の恣意的判断にたよらざるを得ません。以下に、それぞれの分野の審査の総評を記します。

生物分野

生物分野では優れた研究計画がかなりありましたが、予算が限られているために一部しか採択できなかったことは残念です。来年度以降も申請可能な方々には、是非、コメントを参考にして再チャレンジしていただくことをお勧めします。

今年度の生物分野の研究計画を拝見していて感じた点を以下にとりあげます。

  1. 研究計画の多くは、生物と化学や地学などと関係したり、あるいは社会学的アプローチなど、ユニークなものがほとんどで、“複合系”に申請された理由が良く理解できました。しかし、数は多くはありませんでしたが、“生物系”に申請すべきと思われるものも依然としてありました。
  2. 研究計画で述べられている各種調査や実験をどのように利用して研究目的を達成するのかが具体的でない申請がいくつかありました。これらには、もう一歩突っ込んだ計画が必要です。
  3. モデル解析研究では、モデルに用いる実験データやモデル検証のデータの取得に関する記述がほとんどなく、予算にも書籍購入、国際会議参加費・旅費、論文投稿料、英文校閲料だけという申請がありました。少なくとも既存のデータを利用するなどといった説明がいります。

化学分野

本年度の複合系化学分野の申請は、生体物質や生体機能物質の化学・機能化・センシングなどに関するものが過半数を占めています。これらの研究の申請にあたっては、「生物系」や「化学系」でなく「複合系」を選んだ理由を添えることが望ましいのですが、必ずしもそうなってはいませんでした。

研究室挙げてのプロジェクト中のサブテーマを担う院生の申請が増えているように見えます。そのこと自体、本助成の採否に影響を及ぼすものではありませんが、しばしば気になるのは、そのような立場の院生の申請書の中身です。申請書に自身の発想や工夫を示すことなく推薦状に書かれたテーマ説明を転用しているものも見受けられます。若い研究者に、自由で大胆な取り組みを期待します。

支出計画が丁寧に記載されるようになってきました。個々の器具や試薬類の価格が正確に提示されている支出計画からは、申請者の誠意がうかがえます。支出は、各自の研究に必要なものを優先して行うべきであり、海外旅費や大型機器への充当はあと優先されるものと考えていただきたく思います。

ワープロの変換ミスや、脱字、言葉の入れ違い、などが、最近むしろ増えているような気がします。このことは、申請書自体の品位を下げてしまいますから、提出前に、ぜひもう一度申請書を丁寧に見直すようにしてください。

人間科学分野

数年前の申請内容とは打って変わって研究の背景、目的、方法などについても生物系(生理・発生・分子・生化・遺伝などの分野)への申請書と遜色がなくなりました。同じ教員が複合系と生物系の両方に推薦している例もいくつかみうけられるようになっています(もちろん、申請者は異なる)。

申請内容は大きく6項目ほどに分かれます。①人を対象とした運動応答メカニズム研究、②筋力や持久力などの効果とそのメカニズム研究、③栄養物の効果や開発、④脳の認識メカニズム、⑤網羅的研究、⑥アイディア勝負の研究など。

大学院生が応募できる枠組が大変貴重で、有名な教授の下の院生から、アイディア勝負の申請まで、意欲と気概が感じられ、ともに大事で面白い内容が多いので、それらに順位をつけるのはなかなか苦しい作業でした。

採択とは関係なく、意外性のあるテーマとして下記がありました。経皮的炭酸ガス吸入法による微小循環の改善、母親のミトコンドリア体質が仔に伝播、左利きの脳、サルコペニアと補体の関係、脊椎動物種間の神経分化、機械的刺激(触覚)の評価、などです。

運動効果のメカニズムの研究で、酸化ストレスを単純に悪いモノと決めつけた申請が多いのは、本申請に限らず学会で多いのですが、微量な活性酸素種は細胞のシグナルになっており、かつ適応を担う分子シャペロン(ストレスタンパク質)を誘導し、本年のオートファジーのようにタンパク質分解を促進する因子ともなっていることから、それらの内容で挑戦的に申請するときには、自分の興味以外にも広く文献を拾って、現象を位置づけたことを銘記した上で挑戦的に研究をやるというぐらいになってほしいとおもいます。

複合系では病気の原因究明や治療というよりも未病予防の目的でのメカニズム研究を狙う研究が多かったのですが、ここでも安易に現在の生命科学の一般的・常識的な知見で判断して申請しているところに現代における科学の大きな問題点を見ます。

適応進化の研究さえ要素還元的になっており高齢社会を救う戦略がでてきません。

理学療法的な研究も、他の生物実験と同じように「モデル実験」が多く、現実に身体全体をみて働きかける有効な運動プログラムやその評価方法が一向に科学の場に引き出されない現状は、笹川科学研究助成としては残念でなりません。つまり現場と科学研究が乖離しており、両者をつなぐ方向があることを何らかの形で本会が提案してゆくような試みを企画して欲しいと思います。

看護分野

毎年のこととはいえ、保健医療福祉関連分野で、今日、我が国が抱える緊急課題に対応した多様な研究テーマを前に、採否の決定に多大な困難を感じました。

それは、高齢者関連問題、障害者福祉の問題、医療機器関連の安全問題などなど、今日、医療・保健・福祉関連従事者が、「地域包括ケア」を目指したチーム医療を目指す中で、共通に理解しておくべき重要事項に関連しているからです。

特に今回、この分野の研究方法に、IT関連機器の導入で、計測による「数値化」、映像による「視覚化」が一層、進化・深化してきたことが実感させられました。例えば、

1)高齢者の寝たきり予防を目的に、転倒予防の対象者早期発見により対象者への効果的なトレーニングをするため、脳、運動、認知、精神機能から、転倒関連の脳波バイオマーカーの開発により、対象者の的確な把握をし、地域高齢者の健康増進に寄与する。

2)近年の医療現場への急速な医療機器や多様な通信機器(設備)の普及により、多大な恩恵を受けている反面、その安全管理は、患者及び従事者共通の重要課題となっている。

かつて昭和40年代初期に北大の「電気メス事件」や東大の高圧酸素療法による高圧酸素タンク爆発事件など、生命のみならず建造物爆破に至る事故が発生しました。

近年、医療現場において、電磁波環境に関わる諸問題の多くは解決されつつあり、横浜市立医大の「患者取違い事件」などを契機に、21世紀に入ってからは人的要因による医療事故が増えています。しかし急速な技術の進歩は、更に新たな問題を発生させてきているといえるでしょう。

研究者の指摘の通り、現存システムとの共存は大きな課題であり、LED照明の普及は、省エネ、環境政策の視点からも今後更に普及されると思われるので、緊急な課題でしょう。

こうした一連の医科学の発展は、従来、経験と勘に依存していた部分が科学的に解明され、統一見解の下に医療が提供されるので大いに歓迎されるとはいえ、近年、医師をはじめ医療従事者が患者を前にしながら、パソコン上の数値や映像のみに目を奪われ、肝心の患者の触診・打診・聴診をする経験がないという医師が多くなってきています。さらに、患者とのアイ・コンタクトすら欠如しているという実態が生じており、患者の愁訴と向かい合っての対応、Humaneな医療が置きざれにされないことを願います。

地球科学分野・教育分野

  1. 本年度申請分野の傾向

    (1)岩石学関連(7件);レアアース(希土類元素)関係、プレート沈み込み帯の岩石学的研究、炭酸塩鉱物の微量元素の動向、石筍の形成過程、堆積物の地球化学的分析による古気候の推定、土壌環境とゼンマイの栽培等に関する研究

    (2)古生物学関連(8件);二枚貝類の生息環境、化石による鳥類の生態的研究、内臓の胃石からのクビナガリュウ等の移動履歴や主脚類の多様性、有機質微化石による古環境の推定、哺乳類進化の生態的研究、アンモナイトの隔壁間隔のパターン解析等に関するもの

    (3)地理学関連(5件);小規模扇状地の地形発達史、礫床河川の動態把握、山岳永久凍土の分布と環境条件等、湖沼のリモートセンシングによる情報収集と解析などに関する研究

    (4)その他(9件);地震と断層(野外調査とトレンチによる)、火星の火山活動、絶滅危惧種と保全対策、植物生理学(加齢種子への放電処理)、図書館情報学、保育・中等教育の教材開発に関するもの

  2. ユニークな研究

    研究課題:「胃石を多角的に解剖し、クビナガリュウの移動経路をたどる」

    クビナガリュウの内蔵(胃)中に取り込まれた胃石を追跡指標として利用しようとした研究です。研究の総合的な手法と関わってその実現性を高めるために、胃石解剖の分野における花粉、胞子、放散虫などの微化石の利用、岩石中に含まれるジルコンの年代測定などの複合的な分析手法を工夫して取り入れています。これまでには、このように古生物の内蔵に着目した研究はほとんどないといえるでしょう。
  3. 研究計画の作成に当たって

    ・研究の独創性、新規性を簡潔に分かり易く記述すること。

    ・予察的な研究や調査がしてあれば、どこまでできているかを記述しておくこと。

    ・当該年度に、どこまで実施する予定かを明確に示しておくこと。

    ・研究計画と経費との関係を分かり易く簡潔に述べておくこと。

その他の分野

今年度は、意識や感性と、大脳生理学の関係をfMRIで調べるという申請が多い感じがしました。1年間でまとめるのは、難しいテーマという印象をもちました。

申請書の書き方について、審査員は必ずしも申請課題の研究分野に精通した専門家ではないので、専門外の人にもわかりやすく研究の意義や面白さを説明してください。せっかく、面白そうなテーマであるにも関わらず、申請書から具体的に何をしようとしているのか読み取れず評価されないのは、もったいないと思います。

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