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採択情報・選考総評

2018年度笹川科学研究助成総評

笹川科学研究助成事業委員会委員長

 研究分野や立場的に恵まれない若手研究者の支援を目指して始まった笹川科学研究助成事業は、今回で31回目を迎えました。昨年まで、申請書類は協会宛の直接送付でしたが、今年度から電子申請に移行しました。例年、日本学術振興会(学振)の特別研究員奨励賞への併願が450件程度ありますが、今年度の併願は362件で、100件ほど少なくなっています。これは学振の第一次採択発表が本研究助成の申請締め切り日直前になっているので、結果が事前に確認でき、採択された方は本研究助成に申請しなかったためと考えられます。その影響か、2018年度の申請は1,257件と過去5年間の平均より100件ほど少なく、研究費の申請総額は11億3,136万円になりました。

 申請の多くは例年通りに意欲的な内容で、厳正な審査を経て324件(採択率、25.8%)が採択されました。約4件に1件程度の採択でかなりの激戦です。ちなみに笹川科学研究助成の採択率は、当初は56.3%という高率でしたが、周知が進むにつれて競争が激化して15.0%台へと下がりました。そこで平成19年度に、研究助成事業の趣旨の徹底を図って制度を見直した結果、申請件数が減って採択率は20%代に落ち着いています。31年間の平均採択率は22.3%です。

 これまでの助成件数は9,295件にのぼります。複数回の助成を受けた方もいますが、その数は限られているので、9,000人近い方々が助成を受け、その多くが専門家として国内外で活躍しています。笹川科学研究助成を始めた当時、大学院生は研究費の申請が不可能でしたが、今では文部科学省の科学研究費に大学院生を対象とする申請枠ができ、また、民間の一部でも大学院生対象の研究費の助成事業も始まっています。本事業がこうした社会の動きのきっかけになっているとすれば、大変嬉しい限りです。

 2018年度の学術研究部門の採択者の67.1%が大学院生で、残りは35歳以下の非常勤または任期付き雇用研究者がほとんどです。学術研究部門では、女性の割合が34.2%、留学生および外国籍研究者の割合は9.6%でした。こうした傾向には、このところ大きな変化はありません。

 学生・契約研究者など、現行制度では研究助成の受けがたい身分の若手研究者の掘り起こしはかなり浸透してきましたが、採択課題を見ると萌芽性・新規性・独創性のある研究が未だ十分に発掘できていない感があります。ただ、昨今、指摘されるようになった「日本全体としての活力低下」があるとすれば、萌芽性・新規性・独創性のある研究自体の減少が懸念されます。加えて、学術研究部門の申請の40.0%が生物系で、複合系や海洋・船舶科学系、さらには物理系や化学系の申請にも生物課題が含まれていますので、全体の研究申請に占める生物分野の割合は極めて高く、年々この傾向が強くなっています。本研究助成事業だけでなく、国内の他の研究助成事業でも傾向は同じと聞きます。物理・化学・地学・数学などの基礎科学の弱体化が起こっていないか気がかりです。

 それぞれの専門分野の傾向については、選考委員長の総評を見ていただくこととして、全体に共通している点を二つ指摘しますと、それは多くの研究が先鋭化していることです。研究成果を上げる点では素晴らしいことですが、ともするとその研究の位置づけを見失う危険があります。是非、少しひいた位置からご自分の研究を眺める余裕を持っていただければと思います。もう一つは、それぞれの研究分野、あるいは科学・技術全般を俯瞰した視点、あるいは物事の考え方を変えることにつながりそうな研究課題が見当たらないことです。

 実践研究部門では、2013年度から博物館・学校・NPO などに所属する人たちが行う複数年にわたる調査・研究を支援する実践研究と、学芸員・司書などが単年度で行う資料の調査・研究の支援と、窓口を2つ設けて申請を受けつけています。2018年度は、実践研究の申請件数は44件で昨年度に比べ43件減り、採択数は20件(採択率、45.5%)です。また、学芸員・司書などの申請は21件と昨年の37件から16件減り、9件が採択されました(採択率、42.9%)。当初は実践研究の趣旨が十分に理解されていませんでしたが、次第に理解が浸透してきたことが伺えます。しかし、実践研究部門の申請者の多くが、研究助成への申請の難しい環境にあり、しかも状況が年々厳しくなっているようで、それが申請件数の減少となっている可能性が考えられ憂慮されます。

 研究助成を受けられた方には、翌年2月に研究最終報告を提出していただき、それらをもとにして各選考委員会で研究評価を行ないます。2007年度から、優秀な成果を上げた研究者には研究奨励賞が授与されています。7系(生物系はマクロとミクロ分野)からそれぞれ2人ずつ16名が選ばれ、2018年4月27日(金)の2018年度研究奨励の会で発表会が行なわれ、賞状と副賞が授与されます。また、日本で活躍中の笹川科学研究助成者には、2001年度から海外での研究発表の旅費や参加費用を支援していて、その数は年間58~77件に上ります。

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