ページ内のクイックリンク
  1. このページの本文へ
  2. サイト全体メニューへ
  3. サイト情報メニューへ
  4. お問い合わせへ
  5. サイトマップへ
HOME  >  協会の助成活動  >  笹川科学研究助成  >  採択情報・選考総評  >  2018年度化学系総評

採択情報・選考総評

2018年度化学系総評

化学系選考委員会委員長

 科学技術の進歩・発展に伴い化学系にも様々な新しい動きが見られるようになっています。生化学分野からの申請数の増加がここ数年の明らかな傾向ですが、今年もその傾向は益々顕著になっており、申請者の所属先分野も多様性を増してきています。最近では、IoT、AIなど情報分野の重要性が指摘されていますので、次のウェーブはインフォーマティックスの方向が考えられますが、実際に計算化学の手法を取り入れた申請数も着実に増えているように感じられます。このように、化学系の助成申請の傾向を従来のように分野毎に表示することが難しくなってきていますが、昨年度と同様に化学系の申請全体を大雑把に「物理化学・無機化学分野」と「有機化学・高分子化学・生化学分野」で大括りして、本年度の応募の傾向を俯瞰することにします。

 物理化学・無機化学分野については、光関連も含めて広い意味でエネルギーに関連した内容の申請が多く見られました。この関係では、特に無機化学、有機化学、生化学といった分野にこだわらず、それらを融合した分野での申請に優れたものが多く見られたのが、一つの特徴といえます。一方、材料化学の分野では、現在注目を集めている先進材料に繋がる研究が多く見られましたが、研究内容的にはじっくりと基礎的な見地に立った内容が多く見られるようになり、地球化学及び環境化学分野など、やや陽の当たりにくい分野の地味な基礎的研究テーマとあわせて、本研究助成の目的に沿った申請が少し増えている印象を受けました。

 有機化学・高分子化学・生化学分野のうち、有機合成化学、生物有機化学分野の申請内容は従前と同様、ケミカルバイオロジーに関する研究が増加傾向にあります。特に、高齢化社会を反映して、インフルエンザや認知症等高齢者が罹患しやすい疾病に対して、医薬品産業における実用化研究とは異なる、アカデミアならではの萌芽的アプローチからの興味深いテーマが多く見られ、実現性にやや疑問があるものの、望ましい傾向と言えます。一方、従来型の基礎研究としての反応開発や複雑な分子骨格構築反応の開拓を目指す申請も多く、それらを応用した天然物の全合成研究は当該分野における魅力的な研究テーマであり続けています。

 有機化学分野・高分子化学分野の中の、高分子化学の分野では、刺激応答性高分子の開発、核酸やタンパク質など生体高分子の機能の拡張とその機序の解析、自己組織体やナノ構造体の生成と活用、などのテーマが多く見られました。一方、「有機材料志向」の研究では、分子の実際の空間構造や分子内の電子密度に基づく研究展開設計が多く見られました。その中でも、空間構造の把握に基づいた分子構造や集積構造・超分子構造の設計に関する研究計画が特に目立っていました。これは分子軌道計算やX線・NMR解析の普及が大きく影響していると思われます。

 最後に全体を通した注意点ですが、スッキリした物質の描像から直接的に研究計画を考えるだけではなく、頭のなかでいろいろな物質を組合せて、分子の振る舞いについての自由な発想を楽しみ、それを熟成させて研究に結びつける余裕が欲しいと思います。指導の先生方も、きれいな申請書類の作成指導だけでなく、研究室の空気から醸し出される思考や発想、そういうものに自信をもって学生を導いて頂きたいと思います。また、修士の学生を含む非常に若い方の応募の中には本人の意欲と気概が感じられる申請も含まれており、是非ともこれからの活躍に期待しています。その一方では、申請者の発想した研究というより研究室の研究の一部と思われる、また、研究室の研究を推進するための経費を計上していると思われるような申請書が少なからずありました。助成金を申請者自身の考えた研究を遂行するために使って頂くように、指導の先生方にこの面での協力を強くお願い致します。

このページのトップへ