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採択情報・選考総評

2018年度海洋・船舶科学系総評

海洋・船舶科学系選考委員会委員長

 2018年度の海洋・船舶科学系への申請件数は143件で、申請数の多かった前年度に比べて減少しましたが、最近数年間と同様のレベルに戻ったと考えられます。申請者の所属機関数は50機関で、昨年度とほぼ同程度で、一昨年度の37機関と比べると多くなっています。また今年度は、4年生と博士前期課程の申請者数が全体の50%、博士後期課程も加えると80%を超しており、学生からの申請が多くなっていました。今後も、多様な機関から意欲的な申請を期待しています。

1.全体的な総評

〇 今年度は初めて電子申請が取り入れられ、その際に図表を文章中に入れにくくなってしまいました。来年度の申請では、図表を入れやすいシステムに変更してもらうことにしています。申請書を審査する立場としては、図表は申請書を迅速により深く理解するためには必要不可欠です。申請する側も、自分の主張を多くの人に理解してもらうかという観点から、なるべく図表を入れ込んだ、わかりやすい申請書を準備してもらえるとよいと思います。

〇申請書を審査する人や、あなたの研究成果を見る人は必ずしもあなたの研究分野の研究者とは限りませんが、明らかに先行研究や他の知見のレビューが足らず、新規性が疑わしいものが見られました。研究をするにあたって実験・調査に注力することは当然のことですが、自身の研究が海洋科学のどの位置にあって何が分かっていて何が分かっていないのか、そのテーマに挑戦すると海洋科学の分野にどのように貢献できるのか、というレビューができていないと独りよがりの研究になってしまいます。

〇本助成は単年度のものであるということを理解して申請書を作成するべきです。仮に、研究室の大きなプロジェクトの一環として実施している内容であっても、研究内容の独自性と必要性を明確に示し、本助成を受けることで単年度の期間内に何をどこまで明らかにするのかを具体的に示すべきです。

2.個別の分野に関する総評

〇生物分野の申請内容は、実に多くの分野にまたがり、手法についても多岐に亘るもので、審査員もまた多くの努力と時間を要しました。一部の申請には水生生物を扱っているものの、むしろ一般科学研究部門の方が合致しているテーマがあると思いました。フィールドや分子生物学等、時間と費用のかかる分野においては、単年度の申請であることを考慮して、研究を切り出すことが重要です。支出計画に明らかに無理のあるものや、説明の不十分なものが見受けられました。

〇環境DNA及びバイオロギング・バイオテレメトリー手法を用いた研究申請が目立ちました。近年、メリット・デメリットおよび技術的限界点が示されつつある、これら手法を用いた研究申請には、それぞれ手法の特性を十分に考慮した「明確かつ適切な問題設定」が求められます。技術的困難が容易に想像される総花的申請では高評価を得ることができません。

〇系統・分類学研究に関する研究では、古典的な形態学的アプローチによるものが多くありました。こうした研究の積み重ねこそが近代科学の基礎であり、長期的に極めて重要な学問であることに異論はありません。しかしながら、多様化や成果主義など現在の学術動向を考慮すれば、あわせてより短期的なアウトプットを設定することも必要だと思います。例えば系統・分類にとどまらず、得られた情報を用いた具体的な機能形態学的研究などを組み込む、もしくは分類学的結果と対比させるための生態研究と合わせて実施するなどもよいアイディアです。また系統関係の解明を目的とする場合は、すでに古典的な議論となった遺伝的手法との関連(なぜ形態なのか?)について触れなければ説得力を欠きます。

〇生物分野(特に微生物分野)に関しては、最近の傾向通り遺伝子情報を利用した課題が多くありました。遺伝子情報を利用する研究が定着してきていることを示しており、中には海洋というフィールドの中での生物機能や多様性に対して新しい視点を与える研究が出始めてきているように思えました。一方で、遺伝子情報を取得することは目的とされているが、その最終目標があまりはっきりとしない課題もまだ多く、確立されてきた技術をどのように利用していくか、新たな研究視点をはっきりさせた申請を期待します。対照的に遺伝情報以外を利用したフィールドへのアプローチは、少しはあったもののその数は減少しているように思われ、こちらに関しても今後の全く新しい視点を期待します。

〇地球化学分野の申請では、電子申請の効果か、全体として提案書のレベルがとても上がりました。基本的に不明瞭な文章が少なくきちんと書かれており、そのため採択提案を選ぶ際に大変悩むところとなりました。北極海の海洋酸性化、IODP(国際深海科学掘削計画)などの大きなプロジェクト、有孔虫殻の新しい古環境指標の開発、石灰化における共生関係の解析など、研究室の教員の手助けが必要な提案の中にも、担当する学生さんや若手のアイディアや意欲などが表れた提案書は好感が持てました。若手研究助成ですので、申請者独自のアイディアで申請してもらいたいと思います。

〇海洋科学分野では、大きな研究プロジェクトの一環として、個別の研究を切り取った問題設定が多く見られたためか、世界を見据えた研究目的が多く、その気概は賞賛すべきものもありましたが、一方で研究そのものへの興味より、世界的に意義があることを主張することが先にたち、読んでいてワクワクする申請が少ない印象もありました。言い換えれば、(A)どのような観測・実験を行って、(B)どういう成果を得る、ということは記述されていますが、(A)から(B)にどのように至るのか、そのストーリー性が抜けているために、研究の面白さが伝わってこない申請書が多く見られました。限られた研究予算ですので、もう少し対象を絞って、具体的なストーリーを呈示することで、説得力のある研究計画になると思われました。その中で、別のプロジェクトの一環とはいえ、氷河底部から流出する融解水の生物生産への寄与の研究は、それだけで完結したストーリーが示されており、捉えられるかもしれない現象が想像でき、興味深く感じました。

〇海洋船舶工学分野では、研究としての新しさ、面白さ、チャレンジを感じさせる申請が、見られたのは良かった点です。一方で、研究としての発想の面白さがあるものの、基礎調査が不足していて将来的な発展性に難点があると考えられる申請も複数見られました。具体的には船舶の性能、強度、運航に関する申請、海底資源や海洋エネルギー等の海洋開発に関する申請、海洋関連のロボット開発に関する申請などがあり、残りは基礎的な実験手法開発や意思決定手法の開発に関する申請でした。近年注目されている自律航行船に関しては、大型プロジェクト等が推進されている影響か、今回は申請がありませんでした。独創的な発想に基づくロボット開発、波浪発電、津波防災のための実験方法に関する申請には、現段階ではどのような研究成果が得られるかは分からない、いわゆる萌芽的研究があり、本研究助成の趣旨に一致していると思いました。今後とも、このような申請が増えてくることを期待します。

〇船舶工学分野は、評価を担当した申請数が少ないので傾向を述べるまでには至らないと考えますが、研究としての新しさ、面白さ、チャレンジを感じさせる申請が、選外となったものも含めて見られたのは良かった点である。一方で、研究としての発想の面白さがあるものの、基礎調査が不足していて将来的な発展性に難点があると考えられる申請も複数見られた。

〇人文・社会科学分野、およびそれに近い申請案件は、今回減少し残念でありました。人文社会科学分野は、これまでも少数ながら優れた研究計画のエントリーがあり、採択された課題は概ね優れた研究成果も残してきたといえます。今後とも1件でも秀逸な研究計画が出てくることを辛抱強く待つことにしたい。そのためには、今後とも、広く人文・社会科学分野の研究でも申請できることの周知・広報することで、政策、法制、産業、国際比較、歴史、文明、地理、地域研究などの多様な分野、視点からの申請が一層増えていくことを期待します。

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