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採択情報・選考総評

2023年度 重点テーマ:「海に関係する研究」総評

海洋関連研究責任者

 ここでは、各系への申請の中で重点分野として「海に関係する研究」にチェックがされた申請書の評価を行いました。そのこともあって、様々な分野から多くの提案がありました。4年生と博士前期課程の申請者が全体の約60%、博士後期課程も加えると85%を超しており、昨年度よりも若干学生からの申請が多くなっていました。今後も、多様な機関から意欲的な申請を期待しています。

1.全体的な総評

  • 海に関する研究で応募されているにも関わらず、目的等にほとんど海に関する記述がない申請書が見られました。例えばプラスチック問題は海洋で問題とはなっていますが、その研究のどの部分が特に海洋に関係するかがはっきり述べられていないと、海洋に関する研究とみなすことは困難です。
  • 応募数と研究分野ともに大変多く、よく練られた申請書が沢山あって選考には苦慮しました。研究に主体的に高いモチベーションを持ち、その熱意を論理だった科学の手法へと変換して自身の研究を高めるようにして欲しいと考えています。
  • 申請書としてはとても読みやすいものが増えてきたように思います。図等をうまく利用している申請書も多くなっています。一方で、まだ文章区切りがおかしく、図を利用しないような読みにくい申請書も見られました。
  • 評価者は多様な申請書を、限られた時間で多く読む必要があります。従って、評価者が読みやすく、専門外の内容でも理解できるように記述することが大切です。
  • 申請書のレベルは全体的に高く、体裁的にも誤字等はほとんどなかったように思います。ただし、入力時の操作ミスと考えられる不備のある申請書や、誤字脱字の多い申請書も一部見受けられました。人間は誰でもミスをするものですが、読む側にとってそのミスはプラスに働くことはありません。推敲を十分にして間違いのないように慎重に操作をして申請するようにしましょう。
  • 新しい技術や装置を利用する研究はそれ自体で新しいともいえますが、申請書としてはそれによってどのような新しい知見が得られて、どのように研究が進む可能性があるかをしっかり記述するべきです。
  • 申請者の独自の発想から生まれたアイデアを、関連する分野の専門家である推薦者の指導を受けて、研究計画を作り上げたような研究が、本会の独創性、萌芽性を重視する方針に適合すると思われ、高く評価しました。ただ、そういうケースは限られており、必ずしも多くはありませんでした。所属する研究室がこれまで進めてきた研究の一端を担うものが多く、それを必ずしも否定するものではありませんが、そうした一連の研究の中の単なる1パーツではなく、申請者が独自のアイデアで新しいテーマを見つけ出したような研究が期待されます。
  • 大型研究プロジェクトの一端を担う計画の場合、目的だけでなく経費についても、応募課題が分担する部分が明確にわかるよう記載してください。
  • 研究予算は税金であっても助成金であっても、使用したら結果を公表することが強く期待されます。小さな結果であっても学会などで発表するなり、査読付きのジャーナルに論文として公表することが習慣になると、研究はより発展すると思います。

2.個別の分野に関する総評

  • 動物以外の海洋生物に関する研究では、これまで以上に海藻や海草に関する研究が多く見られました。また、COVID-19で注目され、技術的にも進んだためか、ウィルスや菌類に関係する研究も増えたような印象です。(海洋生物分野)
  • 廃プラスチックや海洋汚染に関わる研究や生体防御機構に関する研究の数が増えているという印象です。一方、分類学、生理学や生態学に関わる研究も変わらず沢山出てきています。いずれの研究分野にも分子生物学的な手法が取り入れられているケースが多く、試薬やキットの単価が高いことから皆の工夫や苦労がうかがわれます。(海洋生物分野)
  • 近年の温暖化に伴う特定生物や生態系の変化および将来予測に関する研究が増えてきました。いずれも重要かつ興味深い課題ですが、同様の計画が多く提案されていることを踏まえ、研究の独自性など他と差別化を図ることが重要かと思います。(海洋生物分野)
  • 申請課題はいずれも海洋関連の研究として相応しいものであった。研究の対象は無脊椎動物から哺乳類まで幅広く、手法も野外観察、飼育実験、遺伝子解析など多岐にわたっていました。採択と不採択課題の評価は僅差で、タイトルが目を惹くものや、予算計画がより綿密な申請書が有利となりました。(海洋生物分野)
  • 地球化学、海洋環境、地学分野の申請では、ほとんどの申請書が背景、目的、手法、計画などがきちんと書かれていて、良質に仕上がっていました。そこで、選考はとても難しく、採択から漏れた中にも優秀な提案書が数多くありました。博士取得されている方には実績が求められます。一方、若い方の場合には、意気込みが加算されます。(地球化学、海洋環境、地学分野)
  • 海洋物理等海洋学に関わる分野では、海洋大循環に関わるものから、沿岸域の生物環境に関わるもの、マイクロプラスチックなど人為起源の汚染に関わるものまで幅広いトピックの研究の提案があり、それらの中で、物理過程を化学トレーサーを用いて解明したり、生態系モデルを取り入れたりなど、学際的な研究が多いことが注目され、比較的レベルの高い研究計画が多くありました。(海洋物理)
  • 地球環境問題対策、海洋再生可能エネルギーの利用、防災に研究動機の出発点を有する研究申請が多く見られました。人類社会の重要な課題に研究の動機を持つことは重要であると考えられます。一方で、新しい発想であっても関連する先行研究はあります。これらを調査し提案内容に反映させ磨きをかけることで、単なる思い付きの領域を脱して、より魅力的な萌芽的・独創的な研究提案になったであろう申請もかなり見られました。(海洋工学分野)
  • 採択と判定したのは、成果が得られた際の社会に対する貢献が大きく、大胆な研究であると感じた申請です。その一方で、最近のトピックスを研究テーマに据えて助成申請を行っているのですが、研究で得られるであろう成果に魅力的なものが少ない申請もありました。もっと大胆な発想で研究のゴールを決めて、そのための研究を行う旨の研究目的、研究目標を構築してほしいと感じました。失敗が出来ないと考えて助成申請書を作成すると大胆な発想は控えめになるので、将来の世界に必要なものであることを強調した研究目的を作成してほしいと感じました。(海洋工学分野)
  • 今回の助成申請では昨年に引き続き、海洋環境に関連した内容の助成申請が多くみられました。その一方で海洋技術や船舶工学関連の研究は少なく感じました。(海洋工学分野)
  • 海洋に関する人文系の助成申請については、僅差で採択候補にならなかったものもふくめ、昨年よりも多くの申請があったように感じました。分野的に人文は助成が得られる公募が少ないので、今後も助成申請を積極的に行っていただきたいと思います。(海洋人文科学分野)
  • 人文・社会科学分野の申請は、今回はこれまでになく多く、大いに喜ばしい限りです。日本人以外や女性の申請者も多くなっていました。取り上げられている研究課題のテーマも、漁業、海ごみ、文化・民俗、景観、保護区、海棲哺乳動物、安全、産業研究と多岐にわたっていました。(海洋人文科学分野)
  • なお、今回から申請金額の上限が100万円から150万円に引き上げられているにもかかわらず、10万円台の申請が見受けられました。研究計画の実施方法が簡便で低コストですむ内容であったためと推察されますが、研究計画の実施方法をさらに多面的、多角的に検討して充実したものとして、本助成研究を最大限に活用するよう、工夫を凝らしてもらえればと考えます。(海洋人文科学分野)
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