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公益財団法人 日本科学協会

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採択情報・選考総評

2025年度 数物・工学系総評

数物・工学系選考委員会委員長

 数物・工学系の申請課題は、宇宙・地球科学、素粒子物理学、数理科学・情報科学、物性物理学、材料科学、機械工学、計測工学、環境科学、都市・建築工学、医療工学など実に広い分野に跨っています。2025年度の申請では、材料科学や計測工学の申請課題が特に多く、その対象は医療工学を含めて広範囲にわたっており、社会の要請に対する貢献と波及効果に対する意識の強さが印象に残りました。

 各分野での総評は下記の通りです。

  • 天文学や素粒子・原子核物理学分野では、素粒子理論とその宇宙科学への適用が多くありましたが、高度な数理科学的技法や代数学・幾何学の知識が要求される分野であり、挑戦的で独創性を出すのが難しい印象を受けました。特に、博士前期課程の中には学習レベルの域を出ておらず、1年間でどの程度の研究成果が出るのか疑問に残る申請が複数ありました。
    また、書籍や旅費が多くを占める申請が多くあり、各大学での図書不足や研究環境の厳しさが窺えます。
  • 数理科学・情報学の分野では、機械学習や人工知能(AI)を活用した独創的で特徴のある研究課題が多くありましたが、ソフトウエアなど開発した成果が公開され、広く利用されることが社会貢献になると考えています。AIを用いた研究課題は時機を得た研究であり、今後の研究対象の広がりに期待が持てます。
  • 物性科学の分野では、種々の物性現象を解明するため、超高圧と放射光を組み合わせた最先端の計測技術の開発や新奇な物性現象の開拓に取り組む申請課題が多く、今後の発展に期待できます 。また申請者の中には、博士前期課程で優れた研究を行って世界的な国際学術誌に発表し、社会人としてシステムエンジニアの経験を積んだ後、物性理論を更に推進するために博士後期課程に再入学した申請者がおり、今後、研究者として大いに期待されます。
  • 材料科学および計測科学の分野では、センサーとセンシングシステム技術、およびそれらの基礎となる物理現象開拓やプロセス技術に関する研究課題に優れたものが多くあり、主要な方向性の一つとして医療や介護、福祉の高度化のためのコミュニケーション技術、新しい医用診断技術の開発研究などが挙げられます。また、生物の優れた能力の分析と活用のための独創的な研究や、現代社会のニーズに応える魅力的で独創的な研究課題も印象に残りました。
  • 環境科学や都市・建築工学の分野では、応募者が例年に比べて増加しましたが、研究対象が自然科学から人文・社会学に跨っており、また研究手法の多様さが印象に残りました。
    申請者は、学部生、大学院博士前期課程および後期課程、博士研究員、助教、准教授などに跨っていますが、学部生と大学院生の申請者が合わせて80%以上を占めており、大学院生は総じてレベルの高い申請課題が多くありました。なお、今回の申請では助教および准教授の申請が多くあり、研究環境の厳しさを反映しているものと思われます。しかしながら、研究成果発表のための会議への参加費、渡航費や論文投稿の費用が多くを占めている申請が複数ありましたが、本来研究を進める上での必要な経費を計上すべきです。

 今回採択されなかった申請課題でも今後に期待できるものが非常に多くあり、次回の申請に期待しています。
 なお、大学の重要な使命の一つは、若い才能ある学生や研究者を育て、未来につなげることにあります。独創的で将来性のある研究課題に取組んでいる学部生や大学院生が、笹川科学研究助成を受けて研究を促進することは、若手人材育成にとって非常に重要であると考えています。

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